小児期の矯正治療とは
ガタガタの歯並び(歯列不正)や上下あごの発育の不調和(不正咬合)は、多くの場合、6から12歳ごろの小児期において、口呼吸・舌の癖・態癖・姿勢などのお口のまわりに関わる筋肉の機能不全が起こることによるものと考えられています。
したがって、この成長旺盛でかつ永久歯列が完成する前の混合歯列期から治療を開始することにより、正しい鼻呼吸、正しい口唇閉鎖、正しい舌の動きを身につけるだけでなく、心身ともに健康的な成長が期待することができ、その結果として全ての永久歯によるきれいな歯並び、咬み合せを実現していきます。
当クリニックでは小児期矯正治療を受けた患者さんの90%以上が、永久歯期治療において永久歯非抜歯かつ審美的で取り外し式のマウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)で治療をしております。
小児期の矯正治療の目的
永久歯の正常な歯並び、咬み合せへの誘導。正しい舌の動きの学習と鼻呼吸への誘導、ひいては正常で健康的な成長発育へのサポート。
小児期の矯正治療の対象者
6-12歳の混合歯列期で、以下のような不正咬合の小児。
小児期の矯正治療のメリットデメリット
メリット
- 骨格の発育旺盛な時期なので、固定式拡大装置(以下、「小児期の矯正治療に使用する装置」を参照)により上あご、下あごを積極的に拡大することが可能です。
- 治療途中にお子さんに負担のすくない簡単な装置でかつ夜間のみの使用だけで改善していきます。
- 反対咬合や上顎前突や下顎のズレについては、正しい下顎の位置に誘導することで将来の骨格的ゆがみを予防することができます。
- 指しゃぶり、舌の癖、口呼吸を除去することができます。
- 鼻呼吸を促すことで健康的な成長発育が期待できます。
- 治療後の永久歯の後戻りが少なくなります。
- きちんと咬める事で、脳に好影響を与えます。
- 綺麗な歯並びに伴って、顔の輪郭の形成が綺麗になります。
- 永久歯治療から治療を開始するよりも、トータル治療費が節約できます。
デメリット
- 固定式拡大装置については、丁寧なブラッシングが必要です。また、お子さんによっては口内炎ができやすい場合があります。
- 取り外し式の装置の装置については、使用時間、使用方法を守れないと治療効果は得られません。
- 本人だけでなくお父さん、お母さんの協力が必要です。
- 適応年齢に達していてもお子さんの発育状態をみて治療開始を遅らせる場合があります。
- 適応年齢であっても1年以内に全ての乳歯が抜ける可能性がある場合は、次の段階である永久歯期治療になる場合があります。
- 著しい上唇小帯高位付着、扁桃腺肥大、舌小帯強直の場合、治療前あるいは途中に専門医院にて治療をお願いする場合があります。
小児期の矯正治療を行う理由
小児期にお子さんの歯並び、咬み合せに気づいたお父さん、お母さんは、お子さんの将来の歯並び、咬み合せ、また全身的な成長を心配されてのこととお察しします。この成長旺盛な時期に予防的治療を施すことで、お子さんの健全な歯並び、咬み合せひいては健康的な成長発育を促すとともにお子さん自身、ならびにお父さん、お母さんの精神的な負担の軽減になればと考えます。
小児期の矯正治療に使用する装置
小児期の矯正治療に関するよくある質問とその回答
小児期治療はいつまでですか?
乳歯が全て抜けて、永久歯列が完成するまでの12歳前後です。その後は、永久歯期治療に進んでいきます。
前歯がガタガタできちんと生えそろうか心配です・・・
すでに永久歯の生えるスペースが足りなくてガタガタしている、あるいは隣の歯のスペースがないなどの場合は、小児期の旺盛な成長力を利用して積極的にあごを拡大していきます。
毎月通う必要がありますか?
ステップ毎の当初は数ヶ月間毎月来院していただきますが、途中マウスピース型のトレーナーにおいては、永久歯の生え変わりとあごの成長を見ながら2から3ヶ月毎の来院になります。
普段、うつ伏せ寝、横向き寝でないと寝られません。寝相が悪く装置が使えるか心配です。
うつ伏せ寝、横向き寝、寝相が悪いなどの原因は、口呼吸によるところが大きいと考えます。マウスピース型のトレーナー装置は、鼻呼吸を促すトレーニング装置ともなっています。就寝中装置が外れるようであれば、就寝前の1時間、口を閉じて使用してもらったり、鼻呼吸を促すための簡単な機能訓練などを併用してもらいます。
ひどい受け口で心配です。
この成長旺盛な時期に上あごを積極に的拡大し、かつ前方への成長を促していきます。と同時に下あごの成長を抑制するための装置を併用することもあります。
ひどい出っ歯で心配です。
出っ歯の場合、上下あごとも狭窄していることが多いので、上下の歯列を拡大した後、下あごの前方への成長を促します。
中学受験を考えていて定期的に通えるか不安です。
基本的に小児期の矯正装置は、シンプルで身体に負担の少ないものを使用しています。また、受験直前には予約を先延ばしにしてもらったり、装置の過度な調整をしないよう心がけています。
子どものうちに矯正歯科治療をはじめると、治療期間が長くなるのでは?
小児期の矯正装置はシンプルなもので済みますが、ある程度の時間がかかってしまうのは事実です。しかし、それと同等の結果を「大人」になってから求めようとすると、治療の選択肢が限定されたり永久歯抜歯が必要になる場合があります。
治療を始めるにあたって、親としてどんなことに気をつければよいでしょうか?
矯正歯科治療の期間中は、日常的に矯正装置を入れたり、毎日の丁寧な歯みがきや定期的な通院が必要になったりと、治療する本人の努力や根気が求められることが多くなります。そのため、治療のスタートにあたっては、お子さん自身に自発的な意思のあることが大切です。
ときに励まして、お子さんのやる気を持続させましょう。